Razer社のHuntsman V2シリーズ。キーボードの中ではかなり高級品の部類で、価格は2万円前後。この時点で「予算オーバー、解散。」と思わず、少々お付き合いいただけませんか?語りたいことがたくさんあるキーボードなんです。PCゲームを10年以上プレイし、数多のキーボードを渡り歩いてきた私からのお願いです。
Huntsman V2シリーズは打鍵音が圧倒的に静か
HuntsmanにはLinear Optical Switch(以下Linear)とClicky Optical Switch(以下Clicky)の2種類の軸モデルが存在します。Clikcyは敢えて音が鳴るタイプなので静音性はありませんが、Linearを1タップすると気付くのは、恐ろしいほどの静音性。これまでのメカニカルキーボードの打鍵音を過去のものにしてしまうほどです。
キーボードは打ち込んだ際に底打ち音が鳴り、スプリングでキーが戻る際にポコッという音が鳴ります。そのどちらもが、かつて体験したことがないほど静かなのです。
メカニカルキーボードの打鍵感を楽しみたい人にとって、キーボードは静かであればいいというものではないことは理解しています。私もその一人で、実際これまで買い漁ってきたメカニカルキーボードは軒並み青軸。
そういう人に限られた記事のスペースで伝えたいのは、「余計な金属音だけがなくなり、打鍵感は全くスポイルされていない」ということです。
さらにブレがなく静か
キーボードのキートップを指でつまんで左右にゆすると「カタカタ」と動くのがイメージできると思います。Huntsman V2ではその動きが、未体験レベルで少なく仕上がっています。
FPSをしていて移動せずにじっとしているとき、WASDのキーに乗せた左手の指にかかる荷重が少し変わるとカタッと動きますよね。それがまるでメンブレン式の薄型キーボードを使っているようにブレません。
ゲーム中、キーボードの動きによる音が大きなストレスであるとは言えませんが、全く気にならないと言えば嘘になります。表面のマットな仕上がりも相まって、打鍵しない状態でキーボード上に乗せている指の安心感に新世代の訪れを実感します。
キーボードは光検知にたどり着く「遅延実質ゼロの光センサー」
工場のエリアセンサー、自動車の自動ブレーキ、エアガンのトリガーシステム。工業製品が高精度、高速度を求めていくと、あらゆる製品が光センサーにたどり着きます。その波はとうとうキーボードに及びました。
Huntsman V2は全てのキーに光センサーが搭載され、キートップが押し込まれると赤外線を遮断していた部位が退いて即座に入力がPCに伝達されるという仕組みになっています。ポイントは「即座に」の部分。
通常のキーボードは押下後にバウンドするので、アンコントローラブルな入力が発生します。その入力を避けるためにソフトウェアが介入して、一定時間(数ms)に行われた入力を一つの入力と検知します。数msも入力が遅延されてしまってはあまり意味がありません。
Huntsmanはそのソフトウェア介入をシャットダウンし、まさにキーがセンサーを通り過ぎた「瞬間」にPCへと入力が伝達されるようになっています。数msされど数ms。回線の遅延、モニターの遅延、マウスの遅延は足し算で増えていきます。ここで削り取る数msは決して無視できるものではありません。
非接触式による耐久性の高さ
Huntsmanは1億回のキー耐久を謳っています。Huntsmanのスイッチは機械的な接触がなく、常時ONのセンサーが発信の信号を送る仕組みなので、接点の摩耗が物理的に発生しません。
二重射出成形によるキートップの消えにくさ
二重射出成形…二色成形ともいいます。かつて製造業で働いていた私が顧客から言われるたびに頭を抱えた成形方法です。簡単に言えば金型に樹脂Aを注入、その上から樹脂Bを注入することで2層からなる成形品を作る技術です。
これが、めちゃくちゃコストがかかるんです。二重成形すれば確かに1層目(奥側)に手が触れることはなくなるので、2層目が完全に擦り切れるまで文字が消えることはありません。しかし生産能率は1層成形の半分以下、何より巨大な金型を使うので高額な設備が必要です。
何が言いたいかというと、こんな技術をキーボードに使うのはとんでもなく贅沢なことです。
まとめ
これだけ技術の贅を尽くしたキーボードが2万円。キーボードは中途半端に妥協して後悔すると、ほぼ確実に壊れる前に買い替えることになるデバイスです。「ゴール」するキーボードとして、Huntsman V2はかなりアリな選択肢だと思うので、気になる方は一度叩いてみてはいかがでしょうか?