FPS歴15年、Deathadderをはじめとしたゲーミングマウス6台を渡り歩いてきたゲーマーが、Deathadder V3 Proの魅力を紹介します。「時代は変わった」。それがDeathadder V3 Pro(以下V3 Pro)を手に取った瞬間の感想でした。
私がかつて愛用していた2013年発売の3代目Deathadderは、日本人にとってはフィット感こそ高いが重く、振り回すにはいささか大きすぎるマウスでした。精密だが重くて大きい。今回はそんなイメージをV3 Proが「軽さ」で一点突破してきた衝撃をお伝えしようと思います。
ゲーミングマウス事情とDeathadder
近年のゲーミングマウスの軽量化と高性能化には目を見張るものがあります。一昔前にはプロゲーマーがこぞって無線マウスを利用するようになるとは思いもしませんでした。
現在の無線マウスは100g切りが当たり前。加えてかつての有線マウスより高い精度、長時間のゲームに耐えられるバッテリーの持続時間が求められています。日本人にとっては大柄で鈍重だったDeathadderは、その特徴的なデザインに強烈なこだわりがある人以外にはあまり支持されないだろうと思っていました。
「あの」Deathadderが軽い衝撃
少し悲観的な予想はV3 Proを握った途端に吹き飛びました。モニターを眺めながらマウスを軽く振ると、カーソルが狙ったアイコンより大きく右にそれていきました。センサーが狂っているわけでも、感度設定が高すぎるわけでもありません。軽いのです。
水で満たされていると思っていたバケツを持ち上げたら空だったときの感覚が、マウスを握る手に伝わってきました。「Deathadderであればこのくらいの力で押し付けながら動かす」という、体に染み付いた習慣が見事に裏切られた瞬間でした。
V3 Proを持ち上げると、「嘘だろ?」。家電量販店に並ぶ携帯電話のモックアップのような軽さに驚きます。改めてスペックを見ると63gしかありません。確かに電子部品の小型化、軽量化は日進月歩の世界ですが、どこをどう削ればこのボディで重量を63gに抑えられるのか。
どんなに見回してみても、肉抜きはされていません。「それならば」と少し強めに握ってみても、きしみや歪みは感じませんでした。この中にバッテリーやセンサー類が搭載されているとはにわかに信じがたい軽量さです。
60g台の他社製マウスはたいてい、小柄なボディに大胆な肉抜きを施して重量を削っています。
スペック表に表れない価値がある
大柄なボディを好むユーザーは少なからずおり、私もその一人。個人的にはCivilizationやHearts of Ironなど、ゆったりと時間を使ってプレイするゲームの場合、つまみ持ちするような小型マウスよりもかぶせ持ちの方が疲れにくいと感じます。
私がFPSやバトルロワイヤル系などの激しいゲームと、戦略ゲームをじっくりプレイするマウスに求めるスペックは違います。
どうしても軽さと大きさは相克してしまう傾向があるので、どのゲームにもしっくり来るマウス選びには悩んできました。長時間プレイするときの安定感ではDeathadderに分があるとわかっていながら、重量がネックで他のマウスを利用することもしばしば。そんな私にとって、90時間のバッテリー持続時間と大柄なボディ、63gという重量が同時に成立しているV3 Proとの出会いは衝撃でした。
クリックボタンの緩やかな掘り込みに人差し指と中指がフィットし、押し間違えにくい大きめのサイドボタンを配した伝統的なデザインはそのまま。かぶせ持ちに適したサイズ感には安心感を覚えます。剛性感もかつてのDeathadderから劣化している様子はありません。
不変の伝統と最先端技術が融合した
V3 Proは性能が進化しただけでなく、ソフトウェアを介しての機能も大きく進化。Razer Synapseを使って行うマウスの設定には感度やボタン構成などの設定だけでなく、持ち上げ高さ(LOD)と着地高さ(LD)を個別に設定する機能も搭載されました。LODやLDを自由に設定することで、これまで以上に自分の腕の動かし方に最適化したマウスを持つことができます。
PCとの転送やセンサーそのものもRazerの最新スペックを搭載しているので、より精確で、より高速なエイミングは大柄なボディであっても他のマウスと遜色ありません。
Deathadderはもう一度「定番」になれる
Deathadderシリーズのフィット感は数多のゲーミングマウスが登場してもなお唯一無二の存在。V3 Proは左右非対称型無線ゲーミングマウスの新たなスタンダードになることでしょう。ハイエンドな無線マウスの購入を検討中の方はぜひ一度手にとって確かめて見てください。